9時までになんかショートショート一つ書こう。

ということです。

『配達人(仮)』
いま、私の前に一人、男が立っている。男はただ私の通る道を塞いでいるに過ぎないのだが、一応、裸である。大きめのコートを威嚇するように広げ、下半身は包み隠さず全てをさらけ出し、後ろから降る煌々としたライトに照らされた男は、ひどく眩しい。
季節は秋を踏んでしばらく経つ。残暑もそろそろと終わりを告げ、コートを羽織る姿も見かけるようになった中、男はあくまで威風堂々、私の前に立ち塞がっているわけだ。
「すまないが、退いてくれないか。」
そう告げたところ、男は、近づこうとも遠のこうともしない曖昧な距離で、はたはたとコートを煽り続ける。表情は暗闇と反射するライトのためよく覗けない。ただ、動きのぎこちなさは若干伺えるものがあった。
「君のその動きは、私には無駄だと思うが。」
ライトの中、男の視線がちらりと覗いた。視線は私の方に向かず、上の空といったところだ。そうして両手をしきりに動かしている。尋常ではない。
私はずいと前に進んだ。異常であれ、なんであれ、その向こうに私の目的地がある。だから進む。
男は後ろに飛び退いた。あくまで私と一定の距離を保つつもりか。感心し、もう一歩私が足を踏み出したその2歩目。男はふいに後ろを向き直ると、全力で駆けていた。コートがはたはたと風を受け靡く。男はコートの前の部分を握りしめ頭を垂れたまま、角を曲がり見えなくなってしまった。程なく、ワゴンが後ろからやってきた。道を空け、ワゴンがいなくなると、後は何事もなかったように、辺りは静まった。
「なるほど。」
うなずく。そして歩き出す。薄暗い電灯が点るこの道はどこか寂しげな感じを受ける。その先は少しだけ明るい通りが広がっているものの、確かにこの道は少々物騒なようだ。(続く)

もの凄く続きに繋がらない、続き方ではありますが、一応続きます。