読書状況報告書

スキップ (新潮文庫)」(北村薫
半端者な読書家の私ではありますが、巡り会った本は大抵が退屈せずに済む良物であるがため、読書でこれまで酷く悔恨の情に駆られたことは未だありません。そんないつも感動を与えてくれる小説の中でも、「これ」というものを決めろと言われると、少々悩んでしまいますが、まあ、ポツポツと名前が浮かぶ作品はあります。それで今回の「スキップ」。「スキップ」は文字通り女子高生であった真理子が、未来へ”スキップ”してしまうお話。タイムスリップものには滅法弱い私ではあるけれども、涙が出る感動というのは本当に久しぶりのことでした。作者を女性と勘違いする人がいるのも肯ける、流麗な文章で描かれる真理子の今はとてもリアルで楽しく、そして悲しいものでした。今いる状況に慣れていく真理子が、時に見せる挫折や喪失感に胸が締め付けられます。スキップしてしまった時間はもうどうにもならない。残酷で悲劇。ひたすら前向きに強く、爽やかに42歳を生きる真理子にそんなことを感じてしまった私でした。

増加博士と目減卿 (ミステリー・リーグ)」(二階堂黎人
なんでこれから読んでしまったのでしょうね、私は。初、二階堂黎人作品です。いや、これはたまたま図書館にあったからなんですよ。短編で読みやすそうでしたし・・・まあ、感想に移ります。こんなのをメタ・ミスって言うんですよね。小説内の登場人物が、「これは小説だ」と自覚しているもののジャンルを。そう言うわけで、この話はトリック物?でパロディーです。新本格派の二階堂さんだけあって、面白いネタをトリックとして使ってあり、「片手間のようで片手間じゃない」と、笑いながら読んでいける楽しい作品でした。