最悪(奥田英朗) 

 最悪 (講談社文庫)
 新年最初に読んだ本がこれです。今年は色々な作家さんの作品を読んで、もちっとレパートリーを増やそうという魂胆で本選びしようと思ったのですが、気付いたら奥田英朗の「最悪」レジに持ってってました・・・まあ、良いとして早速読んでみると・・・うわっ・・・めちゃ胸くそ悪い。小説には読んでいてエネルギーをもらうもの。そして読むことにエネルギーを使ってしまうものとあります。今回はまさに後者。町工場の社長は近隣住民との軋轢、融資のトラブル。銀行員の女性はセクハラに家庭の問題、プータローはヤクザとの揉め事。3者とも右に左に翻弄され、題名通り「最悪」な展開へと事が勝手に進んでいく。読んでて鬱になったり、顔が険しくなったりと負のオーラ盛沢山。どの話も気が滅入ってくる中で、特に町工場の社長の話なんか、もう絶えられないでした。あんなことになったら楽観主義者の私でさえ、首括りたくなりますもん。リアリティがありすぎて、心理描写が上手すぎて、設定が細やかで、もうまさしく「最悪」でした。そして後半、事件が起こってしまうと今度は一気にリアリティが無くなり、なんだか別の話を読んでいるようでした。まあ、気分が最悪のまま終わらなかっただけでも良しとしますか。(☆3.9/5.0)