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 ギラギラとした光飛び交う街の夜も、半分を過ぎ、青白く光る月が西へと傾きかける頃になると、喧騒もどこへやら、なだらかに落ち着いた様子を見せる。百貨店も雑貨屋も小物屋もほとんどが店を閉じ、大半の人々はみな各々の戻るべき場所へと帰っていく。残すは小さな居酒屋の明かりとコンビニのこうこうと照らす蛍光灯の明かりぐらいなものだ。
 今は冬。街の通りには、冷たい風が走り回り、路面上の人の温もりを掠め取っていく。道端のごみが遊ばれて音を立て、シャッターの金属音が通りにこだます。しかし耳を済ませてみれば、風が鳴らす街の寂しげな音だけではない。テンポ良くかき鳴らす弦の音。たたく打楽器。涼やかで熱い歌声。今日もここに集まってきた。熱い野望とギターを片手にキリギリスたちの夜は今、始まったばかりだ。
 「お休みなさい。」
「・・・ああ、お休み。」
テレビの前で普段どおりぼんやりしている父と母は、形だけの言葉を私に掛けたようだ。父の目の前には食べかけの柿ピーに温くなった缶ビール。